国民年金基金に二度目の加入
東京弁護士会会員 中城 重光

1.はじめに

 私は、平成3年8月1日から日本弁護士国民年金基金に加入しています。
 日本弁護士国民年金基金は、平成3年7月19日の設立総会で創設され、翌月1日から実際に動き出しました。つまり、私は、この国民年金基金が創設された当初から、国民年金基金加入したのです。
 国民年金基金に加入した動機は、端的に老後の安心のためでした。当時、バブル景気に陰りがさしてきて、経済的な不安感があちこちで聞かれるようになってきていました。
 この経済問題のほかにも、高齢化社会や少子化などによる国民年金への影響も大きな問題となり、国民年金は大丈夫だろうかといった疑問も呈され出してきていた頃だと思います。
 他方、そのような中において、弁護士会の様相は全く違っていました。弁護士増員論の声が段々と高まってきていたのでした。これを受けて、これから弁護士が益々増えていくことになり、それらの大部分の弁護士が国民年金基金に加入することが見込まれていたわけです。多くの弁護士で支える国民年金基金であれば、国民年金と違って、基盤が安定しているといった噂が周囲に飛び交っていた時期でもあります。

2.東京パブリックへの赴任

 私は、平成20年7月から東京弁護士会が支援している弁護士法人東京パブリック法律事務所(東パブ)に赴任することになりました。
 もちろん、国民年金基金の掛金は、この赴任までの間、遅滞することなく毎回納付していました。
 この法律事務所は、「都市の市民の法的な駆け込み寺」を標榜するとともに「弁護士過疎地解消」も目的の一つに入れ、司法アクセス障害を解消するために諸活動をしていました。
 都市においても法的に救済されていない市民に弁護士が寄り添い、法的問題を新規登録弁護士らとともに解決するという事務所形態です。新規登録弁護士らは、このような活動を通して、弁護士としての基礎的な実務技術と弁護士の使命を学んでいきます。そして、司法過疎地に法律事務所の所長などとして赴任して、司法アクセス障害の解消のため努力するわけです。
 私は、刑事弁護教官をした経験もあったため若手の弁護士とともに仕事ができることに喜びを感じるとともに、このような崇高な目的を有する法律事務所に参画して微力ながらも力を注ぎたいと考えて東パブに赴任することにしたのでした。
 東パブでは、この目的に向かって所員一同が一丸となって進んでいました。おおよそ、順調な歩みであったといえます。

3.知らぬ間の資格喪失

 ところが、東パブ赴任は、国民年金基金との関係において、私自身が予想もしない事態を引き起こしたのです。
 国民年金基金の資格喪失事由に「国民年金の第1号被保険者の資格を喪失したとき」というものがあります。
 東パブが弁護士法人であるため、その構成員となった私自身も厚生年金に加入することになりました。この加入により、自動的に国民年金を脱退することになります。このため、私の知らない間に国民年金基金の資格を喪失してしまっていたというわけでした。
 国民年金基金制度は、とてもよい制度であり、私自身も前述のとおり進んで加入していたわけです。それゆえ、弁護士法人に赴任したということだけで国民年金基金の資格を喪失するということはとても残念でなりませんでした。
 制度の建付がそうなっているといってもなかなか納得できるものではなかったことを覚えています。
 国民年金と厚生年金を一体化するなど何らかの工夫をすることにより、弁護士法人の一員になったことをもって「国民年金基金の資格喪失事由に該当する」という規定を何とか廃止できればよいと思っています。

4.二度目の加入

 私は、昨年5月、日本弁護士国民年金基金に再度加入しました。
 実は、平成23年3月末日に東パブを退任して、元の事務所に戻りました。この時点で、再び、国民年金に移行したわけです。これにより、国民年金基金に加入することが可能になりました。しかし、勉強不足のため、再加入などということは考えもしませんでした。
 私は、昨年4月、ある会合で日本弁護士国民年金基金の伊礼勇吉理事長にお目にかかりました。伊礼理事長は、会派の大先輩であり、いつも何かと御世話になっておりました。
 伊礼理事長にお目にかかった折、上記資格喪失の経緯を説明して、この改善の要望をしました。このとき、伊礼理事長から国民年金基金の再加入を薦められ、さらに事務局の方から詳細なご説明を受けました。
 国民年金基金の掛金納付は、60歳に達する月の前月までしかできないそうです。そうすると、私の場合、数年で「掛金納付終了予定年月」が到来します。しかし、このような時期であっても国民年金基金に加入する利点があるとのことでした。
 その利点とは、支払掛金は、年額81万6000円まで全額所得控除できるということです。私は、所得控除をしながら終身年金を積み立てられるという説明を受け、国民年金基金に再加入した次第です。
 以上が私の二度にわたる国民年金基金加入の経過です。
 終わりにあたり、国民年金基金の安定的な発展を祈念しております。

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陽だまり 2013 No41より