無理せず長く続けて
第一東京弁護士会会員 葭葉裕子 
 私は、2011年4月で弁護士登録15年目になります。この間、続いてきたこととして、2つのことがあります。それは、判例の勉強会と弁護士国民年金基金です。
 どちらも始めたきっかけは、弁護士登録時に感じていた不安にありました。

 まず、1つ目の判例勉強会ですが、これを始めることになったのは、日々の仕事に精一杯で、新しい判例について行けなくなるのではないかという不安にありました。格段、意思が強いわけでもなく、定期購読している判例時報などを必ず確認すると決意しても、1人では続かないのではないかと思っていたのです。
 そのようなとき、私が大学時代に一緒に司法試験の勉強をした先輩弁護士や友人弁護士と集まる機会がありました。そして、普段感じていることなどを話しているうちに、数名で「判例の勉強会をやろう」ということになったのです。
 ただ、そのときみんなで決めたのは、「とにかく長続きできるものにしよう。そのためには、ゆるゆるとした勉強会にする」ということでした。ですので、レポートの作成などは厳禁としたのです。
 そうして始まった勉強会は、判例時報を題材に、1冊ずつ担当者を決めて、担当者の好みで最高裁判決や気になる判例の事案と判旨を、解説を含めながら口頭で紹介するというものになりました。また、ペースは、1か月に1回程度で、1回にこなす判例時報は、3冊から4冊程度としたのです。
 
 このようなゆるゆるとした勉強会ですが、思っていた以上の効果がありました。
 まず、負担感が少ないので、脱落する人はいません。
 次に、勉強会では、紹介のあった判例について、疑問に感じたことや類似事案の経験談なども和気あいあいと話すことを通じて、判例について考える良い機会になっています。紹介のあった判例は、意外に記憶に残っていて、法律相談などの際にも、「確か、あの時の判例勉強会で関連判例があった」と思い出すなど、役に立つことがしばしばあります。
 さらに、勉強会が終わった後は、飲み会になるのですが、これがまた大切な時間になっています。
 気の許せる仲間同士ですので、事件で悩んでいることなどを相談できる場であり、例えば、私が刑事の否認事件で苦心しているときには、自分のことのように一緒に考えてくれるなど、本当に励まされました。
 また、誰かが「今度出張でどこどこに行く」と話すと、その地での美味しい食べ物や歴史なども話題となって、ガイドブックだけでは得られない情報も知ることもできます。みんなで飲みながらの楽しい時間は、リフレッシュできる場でもあるのです。
 こうして、無理せず始めた判例勉強会は、少しずつ身になりながら、いつの間にか15年目を迎えます。

 次に、2つ目に続いていることとして「弁護士国民年金基金」があります。司法修習生のときは、共済組合に入っていましたので、将来の年金について考えることはありませんでした。しかし、弁護士になって、国民年金のみとなったことを実感するとともに、税金の申告なども全て自分でやらなくてはなりません。弁護士になって、将来についてきちんと考えないと、大変なことになるのではないかという不安感を持つようになりました。
 そのようなとき、先輩弁護士でもある父より、「弁護士国民年金基金に入るといいよ」とアドバイスを受けました。このときは、弁護士になってそれほど経っていませんでしたので、実のところ、どういいのかよくわかりませんでした。「将来のために、とりあえず加入してみよう」くらいの気持ちでしたので、まずは、少額の掛金で加入することにしたのです。
 実際に加入してみると、父の言っていた意味がわかりました。掛金全額が税金の控除の対象となるメリットを実感するとともに、加入年齢が若ければ若いほど少ない負担で多く受給することができ、しかも状況に応じて増口・減口も可能ということがわかったのです。そこで、将来の自分に対する保険的な気持ちで、無理のない範囲で、掛金を増やしていくことにしたのです。 
 
 なお、判例勉強会の際に、弁護士国民年金基金への加入の有無を聞いてみました。すると、おおむねの人が入っていて、中には、夫婦(配偶者が弁護士でない場合)で加入している人もいました。また、加入したきっかけについて聞いたところ、先輩弁護士に勧められたからとのことでした。
 
 判例勉強会も弁護士国民年金基金も、どちらも「無理をしないこと」をモットーにしながら、少しずつ身になって、いつの間にか15年近く続けることができました。そして、これからも、どちらも長く続けていきたいと思っています。
 もし、まだ弁護士国民年金基金に加入されていない方がいらっしゃいましたら、ぜひ、加入をお勧めします。少しずつでも続けてみると、気がつくと、いつの間にか大きな支えになっているはずです。
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陽だまり 2010 No.37より