日本弁護士国民年金基金(以下、年金基金という)が、平成3年8月1日に設立され、今年で25周年を迎えます。
少子高齢化もあって国民年金の将来は暗く、また破綻する年金基金もある中で、当年金基金は歴代役員の方々の多大な御尽力と、それに加えて皮肉にも司法改革による弁護士の大幅増員のお蔭で比較的安定した基金となっております。
ところで、私は第一東京弁護士会の平成3年度の末席副会長で、アテ職で当時設立準備中の年金基金担当と設立の発起人にもなりました。このような私の立場上、年金基金に加入せざるを得ません。年金基金は上乗せ年金であり、基礎年金である国民年金に加入していることが前提となりますが、当時未加入でしたので、慌てて国民年金の加入手続をしました。
設立と同時に、お付き合い程度の掛金で加入をし、その後、平成3年8月1日〜4年9月30日に理事、平成4年10月1日〜12年3月31日に代議員、平成18年4月1日〜21年3月31日に学識経験監事を務めさせていただきました。
このように、年金基金の役職を11年半も務めましたが、年金基金加入の型や掛金を全く見直さないまま、平成21年に60才を迎えました。
普通ならば国民年金の保険料の納付と年金基金の掛金の支払いから解放され、65歳の受給開始を心待ちにするところです。しかし、年金基金設立に伴い慌てて国民年金に加入したことは前述のとおりで、60歳時点で納付済月数が年金受給に最低限必要な300ヶ月に3年分程足りません。このままでは折角今まで納付してきた保険料は掛捨てになってしまいます。そこで、65歳まで保険料を納付できる「任意加入」の手続をし、不足分を補い、掛捨ては何とか免れました。
そして、64歳になった平成25年の4月1日から60歳以上65歳未満の人が加入できる年金基金の「特定加入制度」がスタートしたので、これ幸いと早速その手続をし、わずか一年足らずでしたが掛金を月額上限一杯納付しました。
なお、司法修習生の退職共済年金の手続もしましたので、60歳を過ぎてから可能な限りの年金に関する諸手続をし、晴れて平成26年から種々の年金をかき集め、すずめの涙よりは少し多いうずらの涙程の年金を受給することができました。
思えば、設立当時はバブル経済がはじけた頃でしたが、まだ利回りの良かった時代で、年金基金の型を見直し、また、口数を増やす等しておけば良かったのにと今になって悔やまれます。
年金は、若いときには関心が薄く、受給開始近くになるにつれ関心が高まるもののようです。
これが、私の年金に関する失敗談ですが、若い人は年金を考えるきっかけになれば幸いです。
年金について反面教師の私はせめて精一杯健康で長生きし、生涯における年金の総受領額を増やすことに努めることに考えを切り替えました。
平均寿命は最新の平成26年簡易生命表によると、男性80.50才、女性86.83才ですが、不健康で長生きしても意味はありません。重要なのは平均寿命ではなく病気などで日常の生活の制限がされずに健康的で自立ができる「健康寿命」です。この健康寿命は平成25年の統計では男性71.11才、女性75.56才で、平均寿命と健康寿命との差の期間は男女とも10年前後あり、この期間は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味しますので、平均寿命の延び以上に健康寿命を延ばすこと(この寿命の差を短縮すること)が課題といえます。
これから高齢者が健康寿命を保つには「きょうよう」と「きょういく」が重要だそうです。これは「教養」・「教育」ではなく、「今日、用があるか」「今日、行く所があるか」の略であり、日々目的を持ち生活することが必要との意味です。
また、健康でいるには心の若さも必要となりますが、そのことに関するサミュエル・ウルマンの『青春』の詩の有名な一節の一部を抜粋します。
『青春とは人生の或る時期を言うのではなく心の様相を言うのだ。(中略)年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。』
意訳すると、青春とは年齢と関係なく、心の若さであり、心の持ち方次第で若くいられるということです。もっとも、健康な身体あっての心の若さでもありますので、これから健康に留意して過ごしたいと思います。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの基本方針は「国民総参加」ですが、その年には私は71歳となり、男性の健康寿命の限界ですが「きょうよう」と「きょういく」に努め、心の若さを保ち健康で元気に「参加」したいものです。
最後に、平成9年から3年間当年金基金第三代理事長を務められた田宮甫先生が、加入勧奨の際、『いつまでもあると思うな仕事とお金、頼りになるのは弁護士国民年金基金』をキャッチフレーズにしておられましたが、年金受給の身になって改めてこの意味するところを実感しております。
この原稿を書いている最中、田宮先生の訃報に接しました。慎んでご冥福をお祈り申し上げるとともに先生を偲んで当年金基金に関する「名言」を拙稿の標題にさせていただきます。合掌。
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