新型コロナウイルスが猛威を振るい,特措法に基づく緊急事態宣言が全国へ広がり,行動自粛要請によりGWはステイホーム週間に…。東京五輪で賑々しくなると期待していた令和2年の幕開け当初にはこのような事態になっていると想像もしていませんでした。新緑に映える白球を爽快に飛ばして(コロがして?)過ごせるこの時期も,自宅で過ごす時間が多くなり,録りだめしていた明智光秀の大河ドラマも順調に消化中ですが,こちらもコロナ禍の影響で撮影中止との報あり。否が応でも今後の働き方改革,ライフスタイルの変更が迫られることは,我々の業界も例外ではなさそうです。
ひと口に弁護士といいましても,大手渉外に企業内弁護士,スタッフ弁護士や任期付公務員等々多種多様であり,また弁護士となった時期によっても異なると思いますが,地方のいわゆるマチ弁である私としては,弁護士として一生食っていける資格を得た以上,「生涯一弁護士」として死ぬまで我がマチの弁護士として働くのだろうと漠然と思っていましたし,今でも大筋その気持ちのままではあります。
そのような中,先日,登録後間もない我々に刑弁のプライベートレッスンをしていただくなど大変お世話になった大先輩が勇退されました。ご高齢(失礼!)になられたとはいえ,傍からみれば多くの顧問先を抱えるまだまだバリバリの現役,何故に,と思いましたが,ご本人的には「脳力」に限界を感じたからとのこと。自分の弁護士としてのあるべき姿,世間から求められている立ち位置を客観視して,自ら設定した評価基準に達していないとすれば身を引くといった引き際が見事で潔く,明智光秀の娘,細川ガラシャの「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」ではないですが,自分で幕引きの時期を設定するカッコよささえ感じました。
他方で,そういえばその大先輩,「やりたいことはこれから探す。」とも言われていました。「これから探す」か…,悠々自適でそれもいいなあ…,ん,待てよ,これから探すってことは,探す間も探せなくても(探さなくても),支障がないほどに相応の貯えがあるってことではなかろうか。自分で引き際を設定するとしても,それ相応に先立つものがないことにはその選択肢も取り得ないということか。「老後2000万円問題」ではないですが,当たり前のことにあらためて思い至り自分の預金通帳を眺めて青くなったのは言うまでもなく…,弁護士登録から2年ほど経ったときから弁護士国民年金基金に加入していたことは幾ばくかの救いなのかもしれません。
年金基金加入のきっかけは明確には覚えていないものの,振り返ってみればこれと前後して中小企業基盤整備機構の「小規模企業共済」に加入していたことからすれば,基礎年金しか入っていない現状はさすがにまずいんじゃないの?弁護士が出来なくなった時のことも考えておいたら?といった周囲の諸先輩の温かい声があり,また,それに謙虚に耳を傾けて速やかに加入した素直さと行動力が当時あったのでしょう。小規模企業共済もさることながら,年金基金は今にして思えばよくできた制度であり,掛金の所得控除(年間81万6000円上限)はもとより,生きている限り年金が受け取れる「終身保証」であること。加入時年齢に応じた掛金が払込期間終了まで一定額でもあり,少子高齢化の進む我が国にありながら年金基金への加入資格を有する弁護士総数,対象会員総数をみれば安定した所得補償といえそうです。
自分がどのような弁護士でありたいか,自分が弁護士として地域社会から必要とされているのか,それに見合った活動ができているのか,それに見合わないと感じた時の身の振り方等々,自由意志と自己責任のなかで思う存分に活動できることがこの職業の魅力である以上,その終え方も自由意志と自己責任のなかで選択できればこんな幸せなことはない。ただ,そう考えると,その時点でそれ相応に先立つものは必要であり,そのためにはやはり早めに将来への備えに着手しておくことは欠かせそうにもないところ。 当会の弁護士加入率(60歳未満の加入員可能数に占める弁護士加入率)は40.23%と全国平均の31.46%(いずれも2020年4月1日現在)を上回ってはいるもののまだ過半数にも達していないのが現状。私よりも若い未加入の会員にソーシャルディスタンスを意識しながらしっかり声掛けしていこうかと思っているところです。
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