弁護士人生のスタートに考えた30年を経過しようとして
愛知県弁護士会会員 桑原 亮

1 私が愛知県弁護士会に登録したのが平成5年4月、早いもので来年4月に弁護士生活30年が経過します。
 登録時は20代半ば、中高年になっている今の自分を現実に想像できるはずもなく、ともかく30年間しっかり頑張ろうと決意していたことだけを覚えています。
 その間、各種事件を通した弁護士業務のやりがいや、副会長その他会務活動を通した弁護士会との関係を実感したり、弁護士であるおかげで出会えた人との交流等、自分のこれまでの弁護士人生は非常に実りあるものでしたが、その時間はあっという間に過ぎ、まさに「光陰矢のごとし」という思いです。

2 50代になり、自分の考えた30年が終わりに近づいてきて、残りの人生をどのように生きていくか考える時間が多くなりました。
 弁護士として何歳まで仕事をするのか、仕事をするにしても1日何時間くらい働きどのような仕事をするのか、生きていくための糧をいかに確保するのか、同居する家族の将来を含め、切迫感はなくても漠然とした不安があることは否定できませんでした。
 そして、平成5年に登録して以来、私の大学卒業時にあったバブル景気のような華やかな好況感を感じることもなく、現状維持か後退感が多く支配しているように実感してきましたが、2年半以上続く新型コロナウィルス感染症やその拡大抑止のための緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置等の行動規制による閉塞感は別次元の感覚であり、明日や未来への期待を抱きにくい時代となっています。
 それでも、人間は生きていかなければなりません。

3 私は、弁護士2年目の誕生月の28歳で日本弁護士国民年金基金に加入しました。
 加入した動機ははっきり思い出せませんが、節税目的というよりも漠然と自分の将来を考え、無理なく払えそうな金額を設定したという記憶があります。
 それ以降は掛金を増加することもなく月々の支払を継続し、確定申告の社会保険料控除の対象額として確認する程度でしたが、残りの人生を考えるようになった頃、65歳になった際に当基金から受給できる年金額を改めて確認してみました。
 金額は個人情報ですので具体的なお話はご容赦いただきますが、65歳になる同時期には住宅ローンも終わる予定になっていて、65歳まで頑張れば一息つけることを実感できました(妻にとっても大きな安心材料になったようです。)。
 そして、30年から次の10年へという期間的な目標と、それ以降は少し業務量を減らしながら、自分ができる、そしてやりたい仕事に集中できるのではないか、という道筋が奇しくも見えてくることになりました。
 本当は、もう少し掛金を増口できれば良いのですが、「人生山あり谷あり」、厳しいハードルになった場合は続かなかったかもしれないという思いもあり、振り返ると「自分にとってちょうどいい」という継続で良かったと感じています。

4 人間は生きていく中で、結婚、出産という家族構成の変化を経て、自宅の購入や子どもの教育費等の必要な支出が発生していきます。
 これに加えて、人間には「病・老・死」という不安要因があります。自分が病気になった場合には医療保険やがん保険等も入っておく必要があり、死亡する場合に残される家族の生活保障のため、生命保険の加入も必要となります。
 ただ、自身が生きていくうちに確実にやって来るのは「老」です。
 業務処理能力や就労能力が落ちていく自分の収入減は確実にあると予測し、備えておかないといけませんが、生きている限り年金が受け取れる、当基金の終身保証はすごく心強い存在であり、老後を意識する年になって実感しています。

5 日本弁護士国民年金基金の1つのメリット「掛金の所得控除による節税」を見て、「まだまだ収入が少ないから関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、確実に来る「将来の不安要因」に備える視点から関心を持っていただき、できる範囲で加入されることを、「将来の安心」につながった私の体験からもお勧めします。

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陽だまり 2022 No.50より