年金とは、人生後半戦の基盤です。だからこそ、運用においては「元本割れせず、潰れない」が大原則。少なくとも、生活の柱となる部分については、最も堅実な制度を選ぶべきだと私は考えています。
弁護士国民年金基金は、その意味で非常に優れた制度です。年額上限は81万6千円と決まっていますが、それを超える余剰資金で夢を見るのは自由。投資信託、不動産、仮想通貨……何でもやればいい。でも、柱となる部分は、ブレない確実な仕組みに預けるべきです。
実は私は、50代まで金融の世界に身を置いていました。生家が街金業を営み、自身も金融屋に就職して、相場を張ったり、商品設計に携わるという、いわば“金まみれ”の人生。だからこそ、自戒を込めて言えます。
金融商品は「見た目」を整えて作られます。円ベースの低金利環境下では、販売手数料・運用コストを引けば、投資家の期待収益は実質マイナスになることもしばしば(というより、ほとんどマイナス)。そこにリスクを取らせ、見映えを良くして売る――正直、年金のような長期・安定運用には全く向きません。
その点、弁護士国民年金基金は、実に「お金を扱うプロから見て優秀」なのです。以下、3つの視点から解説します。
1. 節税効果という“隠れ利回り”
この基金の強みの一つは、税制優遇にあります。ちょっと計算してみましょうか?
いま、日本弁護士年金基金のHPに掲載されている「ご存じですか?国民年金基金ならではの税制上の優遇措置」というチラシの裏に、「所得税・復興特別所得税・住民税 軽減額速算表」というのがあります。たとえば、あなたが積み立てた年金の額(つまり、あなたの年金の運用元本)が既に500万円くらいあって、そこの速算表に載っている「年額36万円の税軽減」を受けられる人(課税所得金額1800万円)なら、それだけでその年の実質利回りを7.2%も押し上げることになります。制度金融でなければあり得ない高利回り。しかも、これが毎年、税額控除や還付金という形で即効性を持って還元されるのです(老後ではなく、確定申告をするたびに、すぐに受け取ることができるという意味です)。年金の運用益で、毎年ハワイに行けちゃいますね。
もちろん、事務所経営が万年赤字という方(…うちの事務所のような放漫経営のところ)には恩恵が薄いですが、黒字経営の先生方には圧倒的なメリットです。
2. あえて“確定給付型”を貫く理由
年金制度には大きく分けて「確定給付型(DB)」と「確定拠出型(DC)」があります。今や時代の主流はDCですが、それは企業側が運用リスクを加入者に押し付けたいからです。運用益が出ようが出まいが「自己責任」。しかも運用対象は、株式やREIT、不動産ファンドなど、時にハラハラする資産ばかりです(「もしかしたら、いまがバブルの頂点かも?」なんて考えると、歴史的な高値掴みのリスクがあり、生きた心地がしませんね)。
しかし、弁護士国民年金基金はいまだに確定給付型。これは、運用リスクを基金側が引き受け、加入者には一定の給付が約束されているという意味です。
生活基盤となる年金は、夢を追う投資とは分けて考えるべきです。資産運用が得意でない人でも、運が悪くても、安心して老後を迎えられる。それがこの仕組みの最大の価値です。
3. 弁護士業界ならではの“理想的年齢構造”
私は国の年金制度にはやや懐疑的です。高齢化と少子化が進み、制度の持続性には不安が残るからです。事実、私の年金も途中で、受給年齢が繰り下げられてしまいました(年金を貰える年齢が上がってしまいました)。今後どうなることやら….
ですが、弁護士国民年金基金はちょっと事情が違います。
司法改革以降、若手弁護士が急増した結果、年齢構成はむしろ理想的。若年層の加入者が多く、制度の持続性という点でも安心感があります。
業界全体としては色々問題もありましたが、年金基金という点においては、他制度では得難い強みを持っているのです。
おわりに
弁護士国民年金基金は、見た目に派手さのない「地味な金融商品」です。でも、それこそが魅力。高利回り・確定給付・制度安定性という三拍子そろった商品を、私は他に知りません。
もし私がいまも金融屋にいて、この商品と競合する立場にあったとしたら――正直、勝てないです。
そう、それくらい優れているのです。私たちの“老後の柱”として、これほど心強い制度は、なかなかありません。
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